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生まれもった性格は基本的には変わりません。しかし、手術後は発情期の興奮や神経過敏、闘争、放浪などがなくなるので行動が安定しておとなしくなります。性格が変わるのではなく、性ホルモンに起因するストレスから開放されて、行動が変化すると言ったほうが良いでしょう。
犬のオスとメス及び猫のオスとメス、それぞれについて、発情期の行動と手術後の変化を次に説明します。
メス犬は通常1年に2回、定期的に発情期が訪れ、3〜4週間継続します。この時期、攻撃性や警戒心が高まり、普段おとなしい犬でも飼い主や子供への咬傷事故が発生することがあります。メス犬は発情期が来るたびに精神的、肉体的なストレスを受け、それが感情のコントロールを難しくしています。不妊手術をすることによりこのストレスと苦痛を取り除くことができます。手術後は安定した精神状態となります。
メス猫は交尾刺激が起こってはじめて排卵し、発情が終了します。交尾刺激がないと短いサイクルで発情を繰り返します。猫の発情は非常に激しく、飲食を忘れて一晩中オスを求めて鳴きわめきます。家猫であればこの発情期の行動と声は耐え難いものです。オスを求めて出歩くため交通事故にあう確率も高まります。不妊手術をしていないメス猫はテリトリー意識が強く、警戒心も強まり他の猫と争うことが多くなります。不妊手術をすることにより発情期の異常な行動、鳴き声、ストレス、喧嘩による外傷を軽減することができます。
オス犬に良く見られる問題行動である「吠える」、「咬む」などの攻撃性は、闘争本能、狩猟本能によるものであり、これはホルモンの影響下にあります。オス犬は性的に成熟する前に去勢手術をすることで、これらの問題行動やテリトリー意識による尿のマーキングやマスターベーションの習慣を減らすことができます。しかし、性成熟期を過ぎて大脳で学習してしまった後では、去勢手術をしても学習した行動が残る恐れがあるので、早期の去勢手術が望まれます。
オス猫は、未去勢の場合、非常に縄張り意識が強いため、猫同士で喧嘩をしたり、あちこちに排便や排尿をしてマーキングを行います。排尿によるマーキングは室内でも見られます。猫どうしのケンカでは、ケガをするばかりではなく、猫白血病や猫免疫不全ウィルスに感染する機会が増えます。また、テリトリーを巡回したり、猫どうしで争っているうちに、交通事故に遭遇する機会も増えます。オス猫は去勢手術をすることによってこれらの危険因子が減少し、精神状態が安定します。また、去勢をすることで独特の強い体臭と尿の臭いを和らげることができます。 |